ドイツ日記

ドイツのサッカースクール体験記

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いざサッカースクールへ


 日本に戻ってはや2ヶ月以上が経過。時間が経つのはホントに速い、毎週の講義が始まってからはさらに速い。日本の暮らしは人々を駆り立てるムードに満ちているような気がする。

 さて、気を取り直して長男が帰国間際に参加したアイントラハト・フランクフルトのサッカースクールの顛末を書いておこう。発端は、ブンデス・リーガ2部のアイントラハト・フランクフルトの試合を見に行くべくホームページをのぞいたら、夏休みサッカースクールの案内をみつけたので長男に参加したいかとたずねたところ、いつも決断の遅い長男が参加したいと即答、ただちに5日間約18000円のコースを申し込んだところからである。アイントラハトにもいわゆるユーゲント(日本風に言えばユース)チームもあるが、これは厳しいセレクションを受けた、すごいうまい子しか参加できない。長男はこの1年間、近所の普通のサッカークラブ、ヘッデルンハイム1907というのに参加してきた。アイントラハトのユーゲントのコーチの指導が受けられることは、まさに夢と言っていいのかもしれない。蛇足であるが、いま日本でアイントラハト・フランクフルトなんてチームは誰も知らないだろうが、あの名作『シュート! 蒼き伝説』の中で天才・久保嘉晴がドイツにいたとき入っていたチームである。

<1日目>

 会場であるアイントラハトの本拠地、ヴァルト・スタジアムまでは電車を乗り継ぎ小一時間。初日なので妻も同行。ブンデス・リーガを見に来たのと同じところだから交通には不安なし。試合の時は厳重なボディチェックをしていたゲートも今日は何もなし。集合場所に指定されているリヒャー・ラウンジ(リヒャーは地元のビール会社の名前。スポンサーさんですね)に向かおうとしたが、そこへ行く前に子どもと父母がたまっている場所を発見。受付会場がフットサル用の体育館に変更された模様であった。

 受付で名前を言ってユニフォームを受け取る。スクールの費用にはユニフォーム上下とストッキングが含まれると書いてあったのだが、ただのTシャツかもしれないと思っていた。というのも、いわゆるチームユニフォーム(トリコットと呼ぶやつ)は上下で約8000円、ストッキングも1000円位するから、18000円の会費からするとちょっと値が張りすぎると思ったのだ。しかし、予想に反して上下ともアイントラハトのホーム用ユニフォームであった。一応、ブランド的にはFILAである(今年はFILAがチームのスポンサーさんだったのだ)。喜ぶ長男。

 受付の終わった子どもたちは、トリコットに着替えてそのまま体育館の中へ。何十人ものちびっ子アイントラハトたちがすでにボールを追って走り回っていた。同じくトリコットに着替えた長男は、さすがに気圧されたようで、はじっこで見ているのみ。だれも気にしないんだから、一緒にボールを追いかけておいで、といっても出ていけず。

 このとき、見た感じはドイツ人なのに、参加しないでじっと見ている子が一人いた。同じ年くらいの大きさである。ちょっと変な髪型。左右は刈り上げっぽくて中央は普通に残し、前から後ろへ立たせ気味に流している。さっそく「トサカくん」と命名。この髪型がW杯ベッカム・ヘアーであることを知ったのは我々が帰国してからのことであった。

 開始予定の10時になって、そろそろと説明らしきものが始まる気配。コーチの紹介、グループ分けの説明などを受ける(が、コーチの人のくだけたドイツ語はほとんどわからない)。見たところ、長男と同じくらいの10歳前後が一番多そう。7歳以下と13歳以上はすごく少なかった。長男たちは91-92年生まれのグループ、約20人で行動することになった。

 実はこのとき、「3日目の遠足」について何かを聞かれた子どもたちが何人かいた。もともと3日目の午後は「遠足」というスケジュールだったのだ。わが長男も名前を呼ばれ、聞かれた。「@%?にするか、Abzeichenにするか」と言ったようであった(前半は聞き取れず)。こういうときは聞き取れた方を選択すべし、というルールに則って「Abzeichenをお願いします」と答えておいた。辞書的にはバッジとかいった意味だから、遠足のお土産で何かとバッジのどちらがいいかといったのかなと思っていた。しかしこれはとんだ勘違いであったことは、遠足の当日になってわかった。

 さて練習である。プロが試合で使うスタジアムそのものではなく、その隣のサブグラウンドでやるようであった。サブグラウンドも何面もあった。さすがプロチームである。芝生もいい。ふだんの町のクラブチームの芝生だって悪くはないのだが、ここと比べると畳と絨毯ぐらいのちがいがある。グラウンドへ向かう途上、コーチに話しかけた。

「うちの子はほとんどドイツ語ができないですが、サッカーは少しできるので、よろしくお願いします。」

「ああ、全然問題ありませんよ。」

というわけで一安心。長男の名前はコーチのみならず同じグループの子どもたちにも一番よく覚えてもらい、なんだかうれしかった。

 わざわざ金を払って来るだけあってうまい子が多い。さきほどの「トサカくん」も期せずして同じグループであった。ふだんのクラブとは練習のムードが違う。きびきびしている。コーチも次から次へと細かく課題を変えていく。私は5日間に渡ってすべての練習メニューをメモしたが、細かくなるのでここでは紹介しない。集中が切れないように課題を与えていく手際は、さすがにちゃんとしたチームのコーチであるな、と感心した。長男は、このメンバーの中では技術・総力ともに見劣りする感じであるが、とにかく楽しそうにコーチのそばにくっついていた(なるべくそばにくっつけ、というのが言葉のできない長男への私の指示であった)。

 そして昼食の時間。スクールの日程表には「サッカー選手にとって必要な栄養を考慮したバランスのとれた食事」ってなことが書かれていた。昼食代もスクールの費用に含まれているのだ。てっきりスタジアムの中の食堂に行くのかと思ったらちょっと違った。スタジアムのすぐそばにドイツサッカー協会だかヘッセン州スポーツ協会だかの本部ビルがあって、そこの食堂へ出かけていった。徒歩3分ほど。そこはいわゆるカフェテリア形式で、お盆を持って好きなものを取っていくスタイル。とにかく同じグループの子にくっついていけ、同じものをとれ、と長男には言い含めた。長男はなぜかすっかりリラックスしていて、すいすいついていく。無事とりおわってでてきたところで聞いてみたら、結局何をとってもよかったらしい。中には具のないパスタだけとか、ゆでたジャガイモにケチャップかけただけ、とかいう子もいた模様。長男は大好きなカツレツのようなものを取ったようで、嬉しそうであった。「サッカー選手にとって必要な栄養を考慮したバランスのとれた食事」!!

 昼食が終わってだいたい1時。午後の練習は3時からである。でも子どもたちのやることはひたすらサッカー。開放されている体育館で、ほぼ2時間、ひたすら走り回って蹴りあっていた。少しは休めばいいのに、と大人は考えるが、子どもはサッカーが好きなのだ。慣れてきた長男はこのときは控えめに参加。がんばれよ。

 そして午後の練習開始。午前とは違うコーチ。でも相変わらずきびきびした指導。練習の仕上げにミニゲームもあったが、ちょっとレベルの落ちるわが長男は控えめなプレー。でも楽しそうであった。理由ははっきりしている。パスが回るのだ。ボカスカ蹴り合うようなサッカーではないのだ。スペースを作る動きやサイド攻撃が当たり前のように応酬されるのだ。足下での細かなボールキープと無秩序なプレーの多いふだんのクラブでの団子サッカーとはだいぶ様子の違うサッカーを体験して、わが長男も少しずつ何かをつかみ始めたようであった。

(二日目へ続く) ▲ページの先頭へ inserted by FC2 system inserted by FC2 system